全社員へ2026年01月09日

外国人が主役になる時代、日本人はどう生き残るか 

「選ばれる人」と「選ばれる企業」の条件 

外国人労働者が年々増え続ける日本。その現実を前に、「外国人は単なる穴埋め要員」と考えている企業は、確実に取り残されていく。テンポスホールディングスの森下篤史社長は、「今後は“耐久力のある外国人”が、“耐久力のない日本人”と入れ替わる時代になる」と警鐘を鳴らす。外国人を活かし、我々日本人が生き残るために必要な「選別の覚悟」と「教育改革」の真意を聞いた。 

あなたは「選別」に、生き残れますか?

来年あたり、新卒の初任給を28万円にしたいと考えている。これに伴い、当然、既存社員の給料を同じ水準へ引き上げることも検討しないといけない。しかし、今の社員の働きぶりでは、昇給に見合わない社員も多い。給料を上げるなら、社員一人ひとりの生産性を2倍、3倍にするための能力開発や意識改革を、徹底していかなければならない。 

 ただ、そうなれば当然、脱落してしまう人も出てくるだろう。そのとき、そこに入ってくるのが、意欲的な外国人だ。なぜ彼らが意欲的なのかというと、日本人と育った環境がまるで違うからだ。 

多くの国では、「富裕層」「中産階級」「貧民層」というように、階層が分かれていて、貧しい人はずっと貧しいまま、努力しただけじゃ変えられない現実がある。そういう国の人たちが、「日本で稼いで人生を変えたい」と本気で働きに来るんだよな。一方で、日本には貧民層という階層はない。貧しいといっても、餓死するような人はまずいないよ。その恵まれた環境で、日本人には、危機感や我慢強さが薄れている人が増えている。俺は、そうした我慢強さや、困難に耐え抜く力のことを「耐久力」と呼んでいる。 

「耐久力のない人」には、大きく二つのタイプがある。一つは「努力を継続できない人」。もう一つは「労働環境に不満を言う人」だ。まず、能力を高めるには、これまで自分がやったことのない分野に挑戦し、勉強を重ね、実際に経験を積むしかない。その過程では、必ず壁にぶつかるし、思い通りにいかずに苦しくなる時期もある。そうした状況で、途中で投げ出してしまう人は、努力を続ける耐久力がないと言わざるを得ない。 

また、もう一つのタイプは、職場の環境に対して不平不満ばかり言う人だ。「暑い」「寒い」「人が足りない」「パソコンが古い」、そうした声はよく耳にする。しかし、「○○してくれ」と要求するだけでするだけで、自ら改善しようと行動しないのであれば、それもまた耐久力がない証拠だ。 

こういう人達は、転職を繰り返し、低賃金から抜け出せなくなる。そして、そのまま低賃金で年齢をかさね、将来、十分な年金ももらえず、老後の生活はますます厳しくなる。若いうちはなんとか生活できても、60代、70代で現実を突きつけられることになるだろう。 

これからの競争社会を生き抜けるのは、「耐久力」を持つ人間だけだ。与えられた環境の中で工夫し、今できることに集中する。多少の不便や不満があっても、すぐに環境や他人のせいにせず、自分が行動する。そして、労働者の権利ばかりを主張するのではなく、与えられた環境を受け入れつつ、自分を鍛え、力をつけていく。この積み重ねが、耐久力につながっていく。 

ただ残念ながら、外国人と日本人を比べたとき、日本人の方が耐久力は弱いと言わざるを得ない。今後は「耐久力のある外国人」が「耐久力のない日本人」と入れ替わっていく構図が加速するというのが俺の考えだ。これから企業はどんどん人材を選別していく。給料は上がり、その水準に見合った生産性や能力を持たない人材は、容赦なく選別され淘汰されていく。選別の波に飲まれず、競争社会を生き残るためには、労働環境への不満を口にする前に、自分の能力を高める努力を続けることだ。 

外国人材は「穴埋め」ではない 

では、企業側は増加する外国人労働者にどう向き合うべきか。多くの日本企業は「外国人は日本人がやらない3K(きつい・汚い・危険)の仕事を補う単なる労働者」と考えているところが大半だよ。 

これから企業は、「頑張れない日本人の代わりに、意欲のある外国人を入れていく」という方針を、はっきり打ち出していかないといけない。その場合、企業がやらなければならないのは、入ってきた外国人を徹底的に育て上げることだ。 

例えば、外国人社員には日本語能力の習得を義務付ける。ただ単に日常会話やマナーを覚えさせるだけではない。「前年対比」「粗利」「人件費率」といった、自社で日常的に使うようなビジネス用語1000個を、外国人には3ヶ月以内に試験を通じて覚えさせる。 

実際に、テンポスでもこの取り組みを始めて分かったのは、「日本人なら当然知っているはず」と思っていたような言葉や用語を、実は日本人社員が知らずに働いていたということだ。これには驚いたよ。だから、この際だから、日本人社員もひっくるめて日本語を教育し、社員全体のレベルアップを図っていくことにした。 

 外国人社員がビジネス用語を覚えたら、次は、会社の文化や考え方、その用語も覚えさせていく。例えば、「テンポスにおける働きがいとは何か」「百姓テンポスとはどういう意味か」「マイライフシートとは何か」といった、会社独自の言葉や考え方を、しっかり理解させるということだ。当然、これも外国人だけにやらせるのではなく、日本人にも全く同じように勉強させる。 

 一方で、外国人社員に対しては、日本人よりも手厚い制度を用意する。2年に1回は会社負担で母国に帰省できるようにする。ネパールでもスリランカでも、1ヶ月程度滞在できるよう休みを与えて、往復費用は全て会社が出す。 

これを聞いて「日本人社員はどうなるんだ、差別だ!」と不満を言う人に対して、俺は「そうだよ、外国人優遇の差別だよ。文句あるか」と言うことにしている。 

外国人労働者が、居心地よく、安心して働けるよう優遇するのは会社の務めだ。しかし、彼らは人事制度や福利厚生の面では恩恵を受けられるけど、業務では厳しい環境に身を置くことになる。言語や文化の壁がある中で、日本人と同じ生産性を求められるし、そのために能力開発も続けないといけない。だから、その厳しい環境に耐え、仕事に向き合い、成果を出した人には、会社が休みや旅費を与えて、報いるつもりだ。 

これからは、外国人に単純作業や3K(きつい・汚い・危険)といった、日本人がやりたがらない仕事だけをやらせようなんて考えている会社は、もう時代に取り残されて落ちこぼれていくだけだ。じゃぁ、その3Kの仕事を誰がやるかって言ったら、外国人の中にも出来の悪い人がいるし、日本人の出来の悪い人は山ほどいる。そういう人達が、その仕事をやることになるだけの話だよ 

だから、外国人材は単なる労働力ではない。彼らの能力・意欲・成果を適正に評価していく。成長のチャンスも、どんどん与えていく。だけど、“外国人だから”と甘く評価しない。外国人にやらせるとか、日本人にやらせるとかじゃなくて、人材を選別し、人材配置を行っていくというだけだ。 

お前は本当に日本人なのか?  

前述したような時代になっていく中で、日本人は「日本人としてのアイデンティティ」がますます大事になってくる。日本の歴史も知らない、偉人も知らない、そんな人が日本人と言えるだろうか。私達は、歴史や偉人を学び、日本人の魂の根っこにある思想、「武士道」に込められた「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」といった価値観を身に付ける必要があると思うんだ。日本がどう成長してきたのか、偉人たちがどんな想いで道を切り拓いてきたのかを知れば、日本を誇りに思えるようになるはずだ。そして、胸を張って外国人にも「日本はすごい国だ」と、伝えられるようになる。 

 アイデンティティを学んでいくと、結局は、人としてどうあるべきかという話にいきつく。日本人が大切にしている「気配り」や、「徳を積むってどういうことだ」「切磋琢磨ってなんだ」、そういうことを考え学んでいくことになる。だから、アイデンティティを学ぶということは、人間性を高めていくということ。国籍も立場も超えて、同じ方向に向かって力を合わせることができるようになるものだ。