全社員へ2026年02月18日

変化の時代のリーダー像とは 

部下を注意できない上司、社員に厳しくできない社長が増えているそうです。パワハラだと思われないだろうかという不安や、部下に嫌われたくない心理など、そこにはさまざまな背景があります。しかし、問題行動があっても注意せずに放置してしまうような環境は、長期的に見ると部下の成長機会を奪い、その組織全体を衰退させていくと言います。優秀な人材ほど、その職場に見切りをつけて、離れて行ってしまうリスクも大きくなります。 

テンポスグループは、M&Aなどを通して、数々の企業を再生させてきました。最近も、居酒屋などの外食事業を展開するマルシェ株式会社、フードデリバリーを主力とする株式会社サンライズサービスのM&Aを発表しました。森下社長は、M&Aした会社の再生に向けて、人材をどう育て、モチベーションをあげているのか、お話を聞かせていただけませんか? 

改革するときはリーダーが大事 

ほとんどの会社の社員は、真面目に仕事している。言われたことをしっかりやる。でも、数字が悪くなっているときに、どうすればいいかということを自分で考えることができない人の方が多いのが普通だ。 

 サンライズは、コロナの時に大繁盛したんだけど、5類に移行した2023年以降は、宅配需要が減って伸びた売り上げが元に戻ってしまった。赤字になった原因は、繁盛時に人を増やした分の人件費。それなら、コロナ前の人数に戻せばいいじゃないかと思うんだが、それをしなかったんだよ。店長に、課題はなんだと聞くと、人件費ですねと答えるのに、具体的な策がない。どうしたら赤字をなくせるか、黒字にしなくてもトントンにするにはどうするかと聞いても、なかなかアイデアが出てこない。 

 俺が、店に行って話を聞いたら、配達専門の人間が店に4〜5人いるということがわかった。そして中には、キッチンと配達の両方やっている人もいると。それなら、全員キッチンに入ってもらうようにはできないのかと思ったわけ。キッチンの仕事をある程度覚えてもらうためには、どのくらいかかるのかと聞いたら、3〜4ヶ月だと。だけど、例えば稲荷寿司だけとか一つのメニューなら一週間もあればできるようになるというので、5人いるなら、それを順番に覚えさせていけばいいんじゃないのと言った。赤字なんだから、すぐできるコストカットは、どんどんやらないとダメだよ。 

 でもさ、人間は今までやってない新しいことをするのは、なかなかできないもの。俺だって、健康診断で医者に糖尿病予備軍だから気をつけてと言われてるのに、ジャンボアイスをやめられないんだよ。こうすりゃいいとわかっていても、やらない、できないというのが人間だ。 

 だから、リーダーが大事になる。サンライズも、本社が、人数をいつまでに、どこまで下げろと具体的に指示しないで、ただ人件費を下げろとしか言わなかったことがダメ。それじゃ、普通の人は動かない。10万人の会社でも、リーダー一人で変わる。JALが倒産したとき、稲盛のジジイが行ってよ、2年くらいで改革しちゃったじゃないか。 

リーダーを育てるには? 

それは簡単じゃないよな。愛のある厳しい師匠と、その師匠を信じてついていく弟子の関係ができていないとダメだよ。 

 王選手は「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」という名言を残している。努力は、結果に結びつくまでやって初めて努力と言えるというわけ。でも、これはなかなかできないよね。ここまでやる奴はいないから、王選手は世界一になれたんだよ。王選手は、家族の幸せとか自分の人生とか考えてる奴は、そもそもプロ野球選手にならない、極めるんだったら、人間をやめるつもりでないと、というようなことも言っている。「最高のものを求める強い気持ちがないと、結果は出ないものなんだよ」と。 

 俺も王選手の足元くらいには近づきたいなとは思う。よし、今日からジャンボアイスは、3分の1しか食わないことにする。できれば。たぶん。 

どうやって意識を変えるか? 

大切なのは、コミュニケーションなんだよ。例えば、サンライズで俺は、こんな話をした。 

「人間には、素晴らしいところも、悪いところもある。俺は600億の会社を作った社長だけど、ジャンボアイスをやめられないダメ人間でもある。お前らにも、長所と短所がある。お前らの悪いところはどこだと思う? 会社が潰れそうになっているのは、なぜだと思う? 会社の売り上げが下がってきたとき、人件費を減らそうとしないし、宅配が伸びないのだったら他の事業をやればいいのに、やろうとしない。毎日一生懸命やってはいるけど、状況を変えられないでいるだろ。そういう状況を俺と一緒に変えてみないか? お前らは、寿司だけで40億売り上げている。テンポスグループの「株式会社やまと」も寿司やっているけど、その規模は遠く及ばないよ。じゃ、お前らは寿司のプロじゃないか。だったら、たとえば立ち食い寿司なんてやってみたらどうだよ。店さえあれば、明日からでもできるだろ。これまでは金がなかったからできなかったけど、今はテンポスがついている。どうだ、お前ら、やってみるか? やりたいか?」と聞いたら、「やらせてください」と返事が返ってきた。 

「よしわかった。それなら、1箇所だけじゃ面白くないから3箇所いっぺんに立ち上げようじゃないか、それで上手くいく方法を確立して、展開を広げていこう。立ち食いだから、コストパフォーマンスが大事。職人を使うのでなく、機械を活用して、素人や外国人に握らせればコストを下げられる。でもネタは新鮮なものを用意して、一切れを大きくする。すしざんまいに負けないようなネタで、すしざんまいより2割安い店にする。そんな店を作ってみようよ」とビジョンも語った。 

 マルシェでも同じような話をした。マルシェの店は、居酒屋が多いので、餃子があったり、唐揚げがあったり、いろいろなメニューがある。ラーメンもある。先日は、足立区の店に行ったんだけど、足立区というのは生活保護が多いところで、そこでやるんなら、たとえば「貧乏食堂」なんて名前でやってみたら、面白いんじゃないかと言ったわけ。唐揚げの身をもっと大きくして、餃子の餡も3割増やす。その大きな唐揚げと大きな餃子と飯と味噌汁で900円くらいの定食にする。「貧乏食堂」ってふざけた名前だなと思って入ると、すごいコストパフォーマンスが高い商品がいっぱいあるというような店。話題になると思わないかと、言ったんだ。 

 これなら、商品は、今あるメニューを組み合わせるだけでできる。ラーメンも麺を増量して値段は据え置く。今、昼はやってないんだから、ランチタイムは「貧乏食堂」として営業するだけで、どの店も満席になるんじゃないか。すぐできる工夫を重ねていかないと、赤字は解消できない。具体的なビジョンを伝えて、これならできそうだ、やってみようと思わせることが大事なんだ。それで、ダメなら、また次を考える。王選手の言うように、成果に結びつくまで努力を続けましょうということ。ただ、それだけ。 

 こういう話をすると、「ここ数年、チンタラ仕事していたように思う。この機会に、本気でやってみるか」と言うやつが何人も出てくるんだよ。 

 そういうやつをリーダーに育てていく。能力が高い、低いは、実はそんなに関係ない。もちろん高い方がいいが、結果が出るまで工夫改善をやり続けるという気さえあれば、なんとかなるんだよ。育てる側は、遠慮することなく厳しく育てていくことが大切。甘やかしてはダメ。 

 買い物しているときに、子供がさ、駄々をこねて泣いたとする。そんなときお母さんは、根性決めて、横にしゃがんで、手を出さない方がいい。あんたは自分で立てるんだから、一人で立ちなさいと言って、ただ待ってる。手を引いてやればいいじゃないかとか、欲しいものを買ってあげればいいじゃないかとかいう声が聞こえてくることもあるかもしれない。でも、そういう甘やかし方をすると、その子供は成長しない。自分で立たないと、この子の未来はないなと思って、厳しく接する。仕事も同じ。自分で考えて、自分で立ち上がれるようにならないと、リーダーにはなれないんだから。